個人向け国債を買おうと思ったとき、固定5年と変動10年のどちらにするか、金利の数字だけを見て迷っていませんか。
私が窓口でまず確認するのは、こんなことです。
「何年後に使う予定なんですか?」
同じ100万円でも、数年後に支払う予定のお金と、当面使う予定がないお金では、選ぶ際の判断材料が変わります。
私が接する範囲では、固定5年を選ぶ理由として「10年は長い」という声をよく伺います。一方、変動10年を選ばれる方からは、使う予定がないというお話が多いです。
では、自分のお金ならどう考えればよいのでしょうか。この記事では、4つのケースを使って、購入前に整理したいことを説明します。
※窓口の声は私が接した範囲での経験です。以下のケースや金額は説明用に設定したもので、実際のお客さまの相談事例ではありません。商品情報の確認日:2026年10月20日。
最初に確認する違いは、この表だけ
| 種類 | 満期 | 金利の決まり方 |
|---|---|---|
| 固定3年 | 3年 | 発行時の利率が満期まで続く |
| 固定5年 | 5年 | 発行時の利率が満期まで続く |
| 変動10年 | 10年 | 半年ごとに利率を見直す |
共通して、発行後1年間は原則として中途換金できません。その後は中途換金できますが、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。
中途換金では、受け取った利子の一部を戻す形で調整されます。換金時の入金額だけでは購入額を下回る場合があるため、すでに受け取った利子も合わせて考えましょう。
この条件を前提に、ここからは選び方に絞って考えます。基本や中途換金の仕組みを確認したい方は、個人向け国債の入門編をご覧ください。
出典:財務省「個人向け国債商品概要」、中途換金についてのよくある質問
ケース1:3年後・5年後に使う予定が決まっている
説明用のケース:数年後に車を買い替えるため、100万円を用意している。
この場合に最初に確認したいのは、「何年物の金利が高いか」よりも、実際に支払う時期です。
たとえば3年後に使うなら固定3年、5年後なら固定5年が比較の出発点になります。ただし、年数が合えばそれで決まり、ではありません。
「3年後に使う」を、支払う月まで具体的にする
次の2つは違います。
- 3年後の春までに、代金を支払う必要がある。
- 3年程度たってから、都合のよい時期に買い替えたい。
前者なら、「今から3年後」と考えるだけでなく、購入する国債の募集案内に記載された償還日(満期日)を確認しましょう。使いたい支払日までに、満期のお金を受け取れるかが大切です。
後者なら、満期に合わせて支払う時期を調整できるかもしれません。使う時期を動かせるかどうかも、選ぶための材料になります。
5年後に使うお金を、変動10年にしたら?
変動10年を5年後に中途換金して使うことも、制度上は可能です。ただし、固定5年を満期まで持つ場合とは、比較する条件が変わります。
| 5年後に使う場合 | 確認すること |
|---|---|
| 固定5年を満期まで持つ | 償還日が支払いに間に合うか。5年間の利率を固定することに納得できるか |
| 変動10年を途中で換金する | 5年間の金利は未確定。中途換金調整額と入金までの日数も考える |
購入時の金利だけを比べると、この違いを見落とします。使う日が決まっているお金ほど、受け取るまでの流れを確認しておきたいところです。
ケース2:使う予定はないけれど、金利が下がるのは気になる
説明用のケース:生活費などは別に確保してあり、このお金には当面使う予定がない。ただ、受け取る利子が減るのは気になる。
私も窓口で使う予定がないと伺った場合には、一部を変動型にする選択肢も考えるか確認しています。
ただ、使う予定がないことだけで、変動10年に決まるわけではありません。次に整理したいのは、金利が変わることをどう受け止めるかです。
金利の上昇と低下、両方を考えてみる
| 今後の金利について気になること | 比較のポイント |
|---|---|
| 金利が下がって利子が減るのは避けたい | 固定型なら、その国債の満期までは発行時の利率が続く |
| 金利が上がったときに、受取利子にも反映してほしい | 変動10年なら、基準金利の変化に応じて半年ごとに見直される。ただし低下する場合もある |
固定型にも、変動型にも、それぞれ受け入れる条件があります。
固定型を選べば、購入後に市場金利が上がっても、その利率は自動では上がりません。変動型を選べば、将来の受取利子は購入時点では確定しません。
「いつ使うか」が決まっていない場合は、「金利を固定しておきたいか」も考える。 そこまで整理すると、単に年数で選ぶより、自分の希望に合うものを比較しやすくなります。
なお、固定5年を選んでも、満期後に同じ金利で再購入できるとは限りません。「5年間の固定」と「その先もずっと同じ利子」は分けて考えましょう。
固定型を検討するなら、受け取れる利子を確認してみよう
金利の数字だけでは、実際にいくら受け取れるのかイメージしにくいこともあります。
私も窓口で、財務省のサイトで受取利子をシミュレーションできることをご案内しています。
財務省「受取利子シミュレーション」では、固定3年・固定5年などの商品を選び、対象の回号と購入金額を入力して、利子支払期ごとの受取利子を確認できます。
固定型を検討している方は、次の順番で確認してみてください。
- 検討している商品と回号を選ぶ。回号は募集案内などで確認する。
- 自分が購入を考えている金額を入力する。
- 表示される受取利子と償還日を確認し、お金を使う予定と照らし合わせる。
このシミュレーションの受取利子は税引前の表示です。 実際の入金額と混同しないようにしましょう。また、対象の回号が選択肢にない場合は、別の回号の結果をそのまま当てはめず、募集条件を確認してください。
「金利を固定しておきたい」という希望に加えて、購入予定額で受け取る利子を確認すると、自分に合うか考えやすくなります。
出典:財務省「固定5年・受取利子シミュレーションのご利用方法」、「固定3年・受取利子シミュレーションのご利用方法」
ケース3:固定と変動で迷う。全部同じ種類にする必要はある?
説明用のケース:購入を検討しているお金のうち、一部は5年後に使う予定があり、残りは当面使う予定がない。
この場合、全額をひとつの種類にそろえる前に、お金を使う目的ごとに分けて考えられます。
配分の割合より先に、使う予定の金額を分ける
考える順番は、次のようになります。
- 生活費や急な出費に備えるお金を、すぐ使える形で確保する。
- 数年後の支払いに必要な金額と時期を整理する。
- それ以外のお金について、固定型・変動型・両方を持つ場合を比較する。
たとえば、国債への充当を検討する100万円のうち、5年後に60万円を使い、残り40万円は使う予定がないとします。
この場合は、「60万円は支払日と満期を合わせられるか」「40万円は金利を固定したいか、変動を受け入れるか」と、別々に考えられます。
これは固定60万円・変動40万円をおすすめする例ではありません。お金の用途を分けると、全額に同じ答えを出さなくてもよくなるという例です。
分けて持てば、必ず得になるわけではない
固定と変動に分ければ、金利の決まり方を分けられます。ただし、将来どちらが有利だったかは、その後の金利や保有期間によって変わります。
また、どちらも日本国が発行する国債です。発行体を分散することにはなりません。
半分ずつにする、金利が高い方を多くする、と割合から決める前に、使う予定のある金額を整理する方が、目的に沿って考えられます。
ケース4:初めてなので、固定3年で試してみたい
私が窓口で伺う中には、個人向け国債がどんなものかまだよくわからないので、まずは3年にしてみる、という声もあります。
説明用のケース:初めて国債を購入する。長い期間の商品にはためらいがあり、3年で満期を迎えるものから考えたい。
この場合は、満期までの年数に加えて、最初に購入する金額も整理したいところです。
「短い期間で試す」と「少ない金額で試す」は別の選択
個人向け国債は、3種類とも1万円から1万円単位で購入できます。
そのため、初めてだからという理由で、いきなり予定していた全額を購入する必要はありません。仕組みを理解したうえで、少額から始めるという考え方もあります。
| 気になっていること | 購入前に整理すること |
|---|---|
| 満期までの年数が長いのが気になる | 固定3年の満期と、自分が使いたい時期が合うか |
| 大きな金額を購入するのが不安 | 最初に購入する金額を小さくするか |
| 利子の受取り方や換金条件がわからない | 購入前に説明を受けて確認する |
3年であっても、最初の1年間は原則として中途換金できません。期間を短くすることと、いつでも引き出せることは別です。
「まず3年で」という希望に加え、金額や手元に残すお金も一緒に考えてみてください。
申し込む前に、この3つを言葉にしてみよう
選ぶ種類で迷ったら、次の空欄を埋めてみてください。
- このお金は、__年__月ごろに__のために使う。/今のところ使う予定はない。
- 購入する金額は__円。急な出費に使えるお金は、別に__円残す。
- 金利は満期まで固定したい。/半年ごとの変動を受け入れたい。/一部ずつ分けて考えたい。
全部をすぐに決められなくても構いません。迷っている点がわかれば、窓口で相談する内容も具体的になります。
私が確認する「何年後に使う予定なんですか?」という質問も、この出発点です。
「10年は長いから」「今の金利が高いから」という理由から、もう一歩進んで、お金を使う予定と自分の希望を整理してみましょう。
基本を確認したい方へ: 個人向け国債とは?購入前に知っておきたい基本と注意点

