個人向け国債入門|入門編
最近、窓口で個人向け国債を購入される方が増えてきたと感じています。
購入のきっかけを伺うと、金利が上がってきたことに加えて、友人からおすすめされた、テレビで紹介されていた、といったお話をよく耳にします。
一方で、説明していると、途中では換金できないと思っていたという方もいらっしゃいます。
国債という名前は知っていても、どんな商品なのか、預金と何が違うのか、よくわからない方もいるのではないでしょうか。
個人向け国債は、国にお金を貸し、その対価として利子を受け取る金融商品です。1万円から購入でき、満期には額面金額が戻ってくる仕組みになっています。
ただし、金利だけを見て購入するのはおすすめしません。発行後1年間は原則として中途換金できず、その後も途中で換金すると利子相当額の調整があります。
このシリーズでは、窓口で実際に伺う疑問も交えながら、個人向け国債の基本・選び方・中途換金・預金との比較・購入手続きを紹介します。
入門編となるこの記事では、まず全体像と購入前に押さえたい注意点を整理します。初めて個人向け国債を知った方は、ここから読んでみてください。
※金利・募集日程などは2026年10月13日時点で確認した情報です。
個人向け国債は、実際に増えている?
財務省の「債務管理リポート2026」によると、個人向け国債の発行額は次のように増えています。
| 年度 | 個人向け国債の発行額 |
|---|---|
| 2023年度 | 3.53兆円 |
| 2024年度 | 4.40兆円 |
| 2025年度 | 6.02兆円 |
2025年度は、2024年度に比べて約37%増えています。窓口での私の実感とは別に、全国の発行額でも増加が確認できます。
ここで注意したいのは、これは発行された金額の比較であり、購入人数が約37%増えたという意味ではないことです。
いまの個人向け国債の金利は?
2026年10月募集分の金利は、次のとおりです。
| 種類 | 税引前の年利率 | 税引後の年利率 | 金利の扱い |
|---|---|---|---|
| 変動10年・第199回 | 2.05% | 1.6335425% | 初回の利率。以後は半年ごとに見直し |
| 固定5年・第187回 | 2.39% | 1.9044715% | 満期まで固定 |
| 固定3年・第197回 | 2.07% | 1.6494795% | 満期まで固定 |
- 募集期間:2026年10月8日〜10月30日
- 発行日:2026年11月16日
「10月に申し込むこと」と「10月から利子が付くこと」は同じではありません。 この募集分の発行日は11月です。
また、変動10年の年2.05%は、10年間ずっと続く金利ではありません。最初の利子計算期間に適用される金利です。
金融機関や申込方法によって受付締切が異なる場合があります。購入時には、最新の募集条件を確認してください。
100万円なら、どれくらいの利子になる?
固定5年の年2.39%で、100万円を丸1年間運用したと仮定すると、税引前の利子は23,900円です。
通常の税率20.315%で単純計算すると、税引後は年間換算で約19,045円になります。
計算式:100万円 × 2.39% × 0.79685 = 19,044.715円
ただし、これは比較のための概算です。実際には半年ごとに支払われ、初回の利子計算期間や税額の端数処理によって受取額が異なります。上記金額が一度に振り込まれるわけではありません。
購入を考えるときに押さえたい3つの特徴
購入者全員の理由をひとつに決めつけることはできません。ここでは、預金などと比べる際のポイントを整理します。
1.受け取れる利子を具体的に比べられる
利率だけではピンとこなくても、「100万円なら年間いくらか」と金額に直すと比較しやすくなります。
ただし、国債がどの定期預金よりも有利だとは限りません。金融機関ごとの金利やキャンペーン、預ける期間、途中で資金が必要になる可能性まで含めて確認しましょう。
2.額面で償還される仕組みがある
個人向け国債は、満期に額面金額が戻り、中途換金にも国による買取の仕組みがあります。市場価格で売却する一般の国債とは、扱いが異なります。
なお、預金ではないので預金保険制度の対象ではありません。元本や利子の支払いを担うのは国です。「元本割れしない仕組み」と「どんなリスクも一切ないこと」を同じ意味で捉えないようにしましょう。
3.変動10年なら半年ごとに金利が見直される
変動10年は、基準金利に応じて半年ごとに利率が変わります。基準金利が上がれば、受け取る利子が増えることもあります。
反対に、基準金利が下がれば利子も減ります。将来の金利上昇が約束されているわけではありません。
3種類とも、最低金利は年0.05%です。
変動10年・固定5年・固定3年は、どう選ぶ?
私が窓口で接する範囲では、固定5年を選ばれる方が多いと感じています。また、特に高齢のお客さまからは、10年は長いというお声を伺います。
これは私の窓口での実感で、全国の購入傾向を示すものではありません。ただ、商品の名前にある「10年」が、購入を考える際の気がかりになっていることは、説明の中で感じる点です。
| 比較する点 | 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 |
|---|---|---|---|
| 満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
| 購入後の金利 | 半年ごとに変わる | 変わらない | 変わらない |
| 選ぶ際の着眼点 | 金利の変化を受取利子に反映させたいか | 5年間の利率を確定させたいか | 3年間の利率を確定させたいか |
固定型は、購入時に決まった利率が満期まで続きます。その後の市場金利が下がっても利率は変わりませんが、上がった場合も自動的には上がりません。
変動型は今後の金利に応じて変化するため、購入時点では10年間の利子総額は確定しません。
「いま一番金利が高いもの」だけで決めず、いつ使うお金なのか、金利を固定したいのかを考えることが大切です。
私も固定型を希望される方には、金利を固定する選び方でよいかを確認しています。固定型と変動型の違いを知ったうえで選んでいただきたいからです。
10年満期でも、10年間ずっと換金できないわけではない
窓口で説明していると、個人向け国債は満期まで解約できないと思っていた、という方が少なくありません。預金でいう「解約」に近い手続きは、個人向け国債では「中途換金」と呼びます。
変動10年・固定5年・固定3年のいずれも、原則として発行から1年経過後、第2期利子支払日以降に中途換金できます。一部だけを1万円単位で換金することも可能です。
ただし、途中で換金すると、次の金額が「中途換金調整額」として差し引かれます。
直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685
通常の課税扱いでは、おおむね直近1年分の税引後利子に相当します。そのため、1年が過ぎてすぐに換金する場合、利子をほとんど手元に残せないことになります。
また、換金時だけの入金額は、調整額を差し引くため、購入額を下回ることがあります。「元本割れしない」という説明は、すでに受け取った利子も含めて理解する必要があります。
普通預金のように、申し込んだその場で現金を受け取れる商品でもありません。財務省は、申込日を含めておおむね3営業日後の支払いと案内しています。
発行後1年未満の換金には、本人が亡くなった場合や、対象となる大規模な自然災害で被害を受けた場合などの特例があります。
定期預金・定期貯金と何が違う?
ここでは、一般的な円の固定金利の定期預金・定期貯金と比較します。具体的な条件は金融機関や商品によって異なります。
| 比較する点 | 個人向け国債 | 一般的な定期預金・定期貯金 |
|---|---|---|
| お金を運用する形 | 国が発行する債券を購入 | 金融機関に預け入れ |
| 金利 | 変動型と固定型がある | 固定金利の商品が一般的 |
| 期間 | 3年・5年・10年 | 商品によって異なる |
| 途中でお金が必要な場合 | 原則、発行後1年間は中途換金不可 | 中途解約の条件は商品による |
| 途中でやめる際の利子 | 原則、直前2回分の利子相当額を調整 | 通常は中途解約時の利率を適用 |
比べたいのは、満期まで持つ場合の金利だけではありません。
たとえば「半年後に使う可能性があるお金」なら、個人向け国債の原則1年間換金できない条件は大きな制約です。満期まで使わないお金でも、税引後の利子や途中でやめる場合の条件をそろえて比較しましょう。
参考:ゆうちょ銀行「定期貯金」、同・商品説明書、財務省「個人向け国債商品概要」
郵便局・ゆうちょ銀行では、どうやって買う?
個人向け国債は、取扱いのある郵便局やゆうちょ銀行のほか、銀行・証券会社などで購入できます。ゆうちょ通帳アプリ・ゆうちょダイレクトからの購入も可能です。
ゆうちょ銀行で購入するには、国債を管理する口座の開設などの準備が必要です。窓口で現金を渡して直接買う取扱いではなく、購入代金は通常貯金から引き落とされます。
必要書類や受付締切は、手続き方法や届出状況によって異なります。募集期間の最終日に初めて準備すると間に合わない場合もあるため、余裕を持って確認しましょう。
出典:ゆうちょ銀行「国債購入」、「国債に関する留意事項」、「ゆうちょの個人向け国債」
購入前に考えたいのは「いつ使うお金か」
私は、個人向け国債を検討する際には、金利と一緒に「このお金をいつ使うのか」を整理することが大切だと思います。
窓口でも、固定金利の選択でよいかという点と、発行後1年間は原則として中途換金できない点を確認・説明しています。友人のおすすめやテレビの紹介がきっかけでも、購入する前に自分に合った条件かを確かめてほしいと思います。
生活費や急な出費に備えるお金まで購入に回すと、必要なときに使えず困る可能性があります。まずは、すぐに使えるお金を確保したうえで考えましょう。
また、額面金額が減らなくても、物価が上がれば同じ金額で買えるものは少なくなります。変動10年が連動するのは基準金利であり、物価そのものではありません。利子が物価上昇を必ず上回る商品ではない点も押さえておきたいところです。
購入を考えるときは、次の3点を確認してみてください。
- 発行後1年間、原則として換金できなくても困らないお金か。
- 満期まで持つ予定か、途中で使う可能性があるか。
- 税引後の利子と中途換金の条件を理解できているか。
個人向け国債は、お金の置き場所を考えるときの選択肢のひとつです。購入が増えているからという理由だけで決めず、自分のお金を使う予定と照らし合わせて選びましょう。

