「がん治療は大変そうだけど、実際にどんな苦労があるのかまでは分からない」
私自身、これまでそんなふうに感じていました。
抗がん剤治療による脱毛や吐き気などは知っていましたが、「味覚障害」という副作用については、正直あまり詳しく知りませんでした。
そんな中、研修でがん治療中の味覚障害を疑似体験するために作られたクッキーを食べる機会がありました。
実際に食べてみて感じたのは、
「もし毎日の食事がこんなふうに感じられたら、かなりつらいだろうな」
ということです。
食事は、ただ栄養をとるためだけのものではありません。
家族と一緒に食卓を囲んだり、好きなものを食べて幸せを感じたりする、毎日の楽しみのひとつでもあります。
今回は、実際に疑似体験したからこそ感じた「がん治療による味覚障害」について紹介します。
がん治療で起こる「味覚障害」とは?
味覚障害とは、食べ物の味を感じにくくなったり、逆に強く感じたり、本来とは違った味に感じたりする状態です。
国立がん研究センター東病院によると、味覚変化には、
- 味を感じにくくなる
- 味を濃く感じる
- 本来とは違う味に感じる
- 何も食べていないのに塩味や苦味を感じる
- 何を食べてもおいしく感じられない
などがあります。
抗がん剤の影響や、特に頭頸部への放射線治療などによって起こることがあり、食事の楽しみの低下や食欲不振につながることもあります。

抗がん剤治療を受けた人の約7割に味覚変化が起こるという報告も
アフラックの特設ページでは、2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析をもとに、抗がん剤治療を受けた患者さんの約7割に味覚障害が起こると紹介されています。
ただし、これは「すべてのがん患者さんの7割」という意味ではなく、抗がん剤治療を受けた患者さんを対象とした研究である点には注意が必要です。
また、味覚の変化は人によってかなり違います。

この数字からも分かるように、味覚障害は単に「味がなくなる」だけではありません。
苦く感じたり、甘く感じすぎたり、食感にまで違和感を覚えたりと、人によって感じ方はさまざまです。
※複数の症状が含まれる調査のため、各割合を合計しても100%にはなりません。
味覚障害は「食べる楽しみ」にも影響する
味覚障害のつらさは、「料理がおいしく感じられない」ということだけではありません。
味覚の変化によって食事がおいしく感じにくくなれば、
食欲が落ちる
↓
食事量が減る
↓
栄養状態や体力に影響する
といったことにつながる場合があります。
国立がん研究センター東病院でも、がん治療中の「食べること」は、必要な栄養をとるだけではなく、安心感や自信、治療への意欲などにもつながると説明されています。

私たちにとって食事は、単なる栄養補給ではありません。
「今日のご飯おいしいな」
「これ、また食べたいな」
家族との食事や、好きなものを食べる時間も生活の楽しみのひとつです。
それが治療によって変わってしまうことは、想像以上につらいことだと感じます。
味覚が変化したときにできる食事の工夫
味覚の感じ方は人によって違うため、すべての人に当てはまる方法があるわけではありません。
国立がん研究センター東病院では、味覚変化がある場合の食事について、いろいろな味付けを試したり、旨味・香り・食感・温度などを工夫したりする方法を紹介しています。
例えば、
- だしや旨味、香りを利用する
- 酸味や甘味などを試してみる
- 食べやすい温度に調整する
- 口の中が乾燥している場合は、汁物やなめらかな料理を取り入れる
- 金属製の食具で苦味を感じる場合は、木製や陶器などに変えてみる
といった工夫です。

国立がん研究センター東病院には、味覚変化がある方向けのレシピも掲載されています。
症状や治療内容によって適した方法は違います。
食事がとれない状態が続く場合や、味覚の変化で困っている場合は、主治医や看護師、管理栄養士などの医療スタッフへ相談してください。
味覚障害を疑似体験するクッキーを食べてみた
今回、私が実際に食べたのが味覚障害を疑似体験するためのクッキーです。
アフラックでは、がん治療による味覚変化を知ってもらう取り組みを行っており、がんを経験したシェフの体験なども紹介しています。
▶ アフラック「落合務さん プロの料理人が、まさかの味覚障害」
実際にクッキーを見たときは、ごく普通のクッキーに見えました。
ところが口に入れてみると、
「苦い!」
想像していた以上に強い苦味を感じました。
しかも食べ終わったあとも、しばらく口の中に苦味が残りました。
もちろん、これはあくまで疑似体験です。
実際の味覚障害は、人によって症状も程度も違います。
それでも私は、
「もし朝・昼・晩、毎日の食事がこんな感じだったらどうだろう」
と考えました。
好きな料理を食べても苦い。
家族が作ってくれた料理もおいしいと感じられない。
それが毎日続くと考えると、大きなストレスになるだろうと思います。

※上記については、筆者が実際に疑似体験クッキーを食べた際の個人的な感想をまとめています。実際の味覚障害の症状や感じ方には個人差があります。
実際に体験したからこそ感じたこと
今回の疑似体験で一番印象に残ったのは、
味覚障害は、外から見ただけでは分かりにくい
ということです。
脱毛などのように見た目で分かる副作用とは違い、味覚の変化は周囲から見ても分かりません。
本人が「食べられない」と言っていても、
「少しくらい食べたら?」
「せっかく作ったのに」
と思ってしまうこともあるかもしれません。
でも、その人には本当にまったく違う味に感じられている可能性があります。
疑似体験をしただけで患者さんの気持ちをすべて理解できるとは思いません。
ただ、
「こういうつらさがあるんだ」と知るだけでも、接し方は変わる
と思いました。
もし身近な人ががん治療を受けていて食事に困っていたら、
「なんで食べられないの?」
ではなく、
「今はどんな味に感じる?」
「何なら食べられそう?」
と聞く。
それだけでも違うのではないでしょうか。
まとめ|当たり前に食事を楽しめることの大切さ
今回、味覚障害を疑似体験するクッキーを食べて、がん治療には目に見える副作用だけではなく、周囲から気づかれにくい苦しさもあることを知りました。
そして改めて感じたのが、
普段、何気なく楽しんでいる「食事」は決して当たり前ではない
ということです。
もちろん、疑似体験だけで実際の患者さんのつらさをすべて理解することはできません。
それでも「知ること」は、相手を理解しようとする第一歩にはなると思います。
今回の経験を通じて、がん治療を受けている方がどんなことで困る可能性があるのかを知り、少しでも寄り添える人でありたいと感じました。
参考にしたサイト
※本記事は筆者の疑似体験をもとに、公開されている情報を参考に作成しています。症状や治療による影響には個人差があります。治療中の食事や味覚の変化について困っている場合は、主治医や医療スタッフへご相談ください。
