コーチングを学んで気づいた、「まずやってみて」の前にできること

自己投資

営業についてアドバイスをする立場になり、研修を受ける機会が増えました。

自分がお客様とお話しすることと、そのやり方を誰かに伝えること。似ているようで、実際にやってみると難しさが違います。

特に悩んでいたのが、アドバイスをしても、なかなか実行につながらないことでした。

「こういう声掛けをしてみたらどうでしょう」
「こんな聞き方もありますよ」

そう伝えても、すぐに試す人は、私が関わる中では多くありませんでした。

正直、思っていました。

「まずやってみてくれたらいいのにな。失敗しても、そこから一緒に考えられるのに」

そんな私が、コーチングや育成支援についての研修を受けて、考え直したことがあります。

今回は、研修で学んだ「相手の話を受け止めること」「考えを引き出すこと」「挑戦の準備を支えること」と、実際に始めた練習について書きます。

自分が動けたからといって、相手も動けるとは限らない

私は、やってみて失敗し、自分なりにアレンジすることが大切だと思っています。

この考えは、今も変わりません。

でも研修を受けて、「教える立場にいる自分は、まずやってみようと思って動いてきた側なんやな」と感じました。

行動してきた自分を基準にすると、相手も同じように試せるはずだと思ってしまう。でも、その最初の一歩の難しさは、人によって違うのかもしれません。

研修で繰り返し伝えられたのは、「できそう・やってみたい」と思えるところまで、準備や練習を支えるということでした。

やり方が分からないまま本番に出て、うまくいかなければ、「やっぱり自分には無理」と感じることもあります。

そこで頑張りだけを褒めても、次にどうすればいいかは分かりません。

行動してもらうことが大切だからこそ、その前に、行動できる準備が整っているかを見る必要がある。

私が変えるべきなのは、「挑戦してほしい」という思いよりも、挑戦につながるまでの関わり方なのだと感じました。

学び① アドバイスの前に、相手の話を「受け止める」

研修で特に詳しく扱われていたのが、「受け止める」という聞き方です。

これは、何でも賛成することとは違います。

「あなたは、こういうことを話しているんですね」と、相手の話を理解し、確認すること。

教える側は、話を聞いている途中で「あ、それならこうしたらいい」と答えが浮かぶことがあります。

でも、そこで割り込んでしまうと、相手が本当に伝えたかったことを聞き逃すかもしれません。

研修では、受け止める技術として、次の3つを学びました。

重要な言葉を繰り返す

例えば、こんな会話です。ここからの会話例は、学びを説明するために作った例で、実際のやり取りの記録ではありません。

相手:「声を掛けた後、何を話したらいいか分からないんです」

聞き手:「声を掛けた後、会話をどう続けるかが分からないんですね」

「声を掛けるのが嫌」という話と、「その後の会話が不安」という話では、必要な支援が違います。

言葉を返すのは、ただ音をまねるためではありません。何に困っているのかを、こちらも確かめるためです。

長い話を整理して、確認する

いくつかの話が出てきたときは、内容を整理して返します。

「最初の声掛けはできそうだけれど、質問されたときに答えられるかが不安、ということですか?」

すらすら要約できなくても、分からなければ聞き直していい。

きれいにまとめることより、「理解しようとしている」「違っていれば訂正できる」ことが大切だと学びました。

小さな言い回しを、聞き流さない

相手:「声掛けだけなら、できそうです」

聞き手:「声掛けまではできそうなんですね。その後に気になることがありますか?」

「だけなら」という言葉には、まだ聞けていない事情があるかもしれません。

ただし、こちらの解釈が合っているとは限りません。「本当はこう思っているんでしょう」と決めつけず、確認することが必要です。

「なるほど」「そうなんですね」という言葉自体が悪いわけでもありません。

「なるほど、〇〇が不安だったんですね」と、何を理解したかまで伝える。

次の質問を考える前に、まず今の話を聞く。相手が続きを話しそうなら、少し待つ。この基本を丁寧にやることが、相手を知る土台になるのだと思います。

学び② 「やったかどうか」だけでなく、事情を聞く

もう一つ印象に残ったのが、「事実」と「事情」を分けて考えることです。

事実は、何があったか。事情は、その背景や経緯、考えです。

事実を確認する質問事情を知るための質問
声掛けはできましたか?どんな場面で、どうしようと考えましたか?
どんな声掛けをしましたか?その言葉にしようと思った理由は何ですか?
練習してみて難しかったですか?どの部分で迷いましたか?

私は、行動していなければ、その結果についてアドバイスできないと感じていました。

でも、まだ行動していなくても、聞けることはあります。

どこで迷っているのか。何が分からないのか。実行する機会はあったのか。

「やっていない」で話を終わらせず、そこに至る事情を知る。

ただ、「なんでやってないんですか?」と詰めるように聞けば、答えにくくなります。

例えば「実際に試そうとすると、どのあたりが難しそうですか?」と、困っているところを一緒に探す聞き方にしたいです。

学び③ 関心を持っているかより、相手に伝わっているか

研修では、関係性についても時間をかけて学びました。

講師は「相手に注意を向けること」を関心、「さらに深く知ろうとすること」を興味として整理していました。

大切なのは、こちらが「気にかけています」と思うだけではなく、相手がそう感じられているか、という視点です。

忙しそうに話を聞いたり、こちらの話ばかりしたりしていたら、相手は相談しづらいかもしれません。

教える立場としても、「前にこういうところで困っていましたよね」と話をつなげられれば、その人に合わせた支援がしやすくなります。

まだ関係性ができていないのに、いきなり「仕事を頑張る理由は?」と深い質問をするのではなく、普段の仕事や困っていることから知っていく。

もちろん、何でも聞けばいいわけではありません。話したくないことに無理に踏み込まず、相手の反応も大切にしたいと思います。

学び④ 練習は「今日は何をできるようにするか」を決める

研修では、練習の進め方も具体的に教わりました。

印象に残ったのは、ロープレを始める前に、今回の練習で何をできるようにするかを決めておくことです。

例えば「相手の話を最後まで聞く」「重要な言葉を受け止める」など、まずは取り組む項目を絞ります。

何となく練習して、その後に声の大きさ、質問の内容、相づち、表情……と全部指摘されたら、どこから直せばいいのか分からなくなりますよね。

練習後のフィードバックも、「よかった」「もう少し頑張ろう」で終わらせず、具体的に伝えることが大切だと学びました。

研修で紹介された進め方は、次のようなものです。

  1. お客様役として、どう感じたかを伝える。
  2. 先に決めた練習項目について、できていたことを伝える。
  3. 必要な改善点を絞って伝える。
  4. 本人に「やってみてどうでしたか?」と聞く。
  5. 次に練習することを一緒に決める。

例えば、「話を途中で遮らず、最後に内容を確認してくれたので、話しやすかったです」と伝える。

これなら、何を続ければいいのかが分かります。

できていないところを全部見つけることより、次に何をすればよいかを分かるようにする。

本番の後だけでなく、本番の前に一緒に考える「フィードフォワード」という支援も学びました。行動前から関わっていれば、その後の振り返りも具体的にできます。

私が始めたのは、お客様への声掛けを自分で考えてもらう練習

こうした学びを受けて、私が実際に始めたのが、本人に考えてもらう練習です。

「自分なら、こういうお客様には、どんな声掛けをする?」

こちらから言い方を伝える前に、まず、お客様のニーズを考えてもらうことにしました。

どんなことを求めている方なのか。何か困っていることはありそうか。それを知るには、どう声を掛ければよいか。

お客様を理解するための問いかけを考え、会話の引き出しを増やしてもらいたいと思ったんです。

ただし、考えたニーズは、まだこちらの想像です。お客様が実際にそう感じているかは、話を聞いて確認する必要があります。

「この人には、この商品」と先に決めるのではなく、「この人を知るには、何を聞いたらいいだろう」と考える練習にしたいです。

そして、考えてもらったことを、こちらも途中で否定せずに聞く。「なぜ、その声掛けを考えたの?」と事情を知り、必要な助言につなげる。

そのために、研修で学んだ受け止め方が、私自身にも必要なのだと思います。

考えを引き出すことと、教えることの両方が必要

今回の研修には、質問や対話だけでなく、やり方を教えることや、具体的な練習の支援も含まれていました。

「自分で考えてもらう」というのも、答えが出るまで放っておくという意味ではありません。

必要な知識がなければ、説明する。言葉が出てこなければ、例を一緒に考える。本番が不安なら、先に練習する。

こちらがすべて答えを渡すのでもなく、すべて本人任せにするのでもなく、その人が今どこで困っているかに合わせたいです。

実際の行動につながったか、どう変わったかは、これから見ていくところです。まだ「この練習で成果が出ました」と言える段階ではありません。

だからこそ、やってみた後も話を聞いて、次の支援を考えていきたいと思っています。

人を支えるための学びも、自己投資になる

自己投資というと、資格の勉強や専門知識を増やすことが思い浮かびます。FPの資格取得も、私にとって大切な学びでした。

でも、知っていることを伝えたからといって、相手が行動できるようになるとは限りません。

今回学んだのは、相手の話を受け止め、事情を知り、できそうと思える練習を一緒につくることです。

私は今も、やってみて、失敗して、自分なりに工夫することが大切だと思っています。

アドバイスをする側になったからこそ、自分の伝え方や聞き方も磨いていく必要がある。そんなことを感じた研修でした。

※この記事は、研修での学びを筆者自身の言葉で整理した体験記事です。会話例は説明用に作成しています。

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